●重要になって来た地盤調査
買われた土地は、古家が残っておりましたので、計画段階では、地盤の事は付近の大まかな資料しかありませんでした。この一帯は丘陵地で、そんなに悪くは無い地盤だと思っていましたが、古家の基礎を撤去した際に、地盤の表層が粘土層である事が判明しました。
粘土層は乾いて締まった地盤は固いのですが、水を含むと圧密沈下を起こし、長い年数を掛けて不同沈下を起こす可能性があります。
そこで、地盤調査をすることにしました。
調査方法は、スウェーデン式サウンディング(SS試験)です。この試験では、地盤強度は把握できるものの、土質は大まかにしか分かりません。ただ、付近の状況を判断すれば、深くまで調査する必要のない場所かと思われましたので、4~5万円程度の費用で済むSS試験を行いました。
すると、現況の地盤の直下2m付近に元の地山の層があり、そこは予想通り固く頑丈な地盤である事が確認できたのですが、表面から2mまでは、粘土質の土が盛られた状態で、このまま家を建てるには、危険が大きい事が判明しました。
最近は、瑕疵保険を申請する際に、地盤調査が義務化する機関が増えていますので、地盤調査をする現場をよく見かける様になりました。しかし、調査の後、地盤改良が必要か、杭工事が必要なのか、何もしなくて良いと判断するのかは、設計者の判断です。
建築主が、直接設計事務所と設計監理契約を結ぶ事によって、初めて設計者は建築主の最大利益を守る判断が出来ます。
この現場では、私は、お施主様の最大利益を守る為、この現場は柱状改良が妥当であると判断しました。
仮にこの工事が、工務店さんの依頼により、この仕事を引き受けていれば、工務店さんの最大利益を守る事になります。
それは何かと云いますと、瑕疵保険の中の特約条項に地盤保証と云う選択があり、保険手数料を上積みすれば、柱状改良を行わなくても、万が一事故が起こった場合、地盤保証の保証金で問題を解決する事が出来るのです。そうする事により、工務店はお客様に対し、他社より柱状改良工事を行わない分、安い建設費で工事を請け負う事が出来て、競合他社に勝つ事が出来るのです。
安く建物を提供できる事は、お施主様にとっても、悪い事ではありませんが、事故が起こったら保険で何とかすれば良いと云う考えに、私は抵抗を覚えます。
まずは、事故が起こらない、安全な家を提供する義務があると思うのです。
設計者として、判断するには、上記の二つの方法があり、ケースバイケースでどちらが正しいのか、一概には言えませんが、事故が物損で済めば良いのですが、人的損害が発生した場合、お金では解決出来ない問題となります。
建築主として、工務店やハウスメーカーに設計込みで依頼するのであれば、設計者は工務店の最大利益を優先する事になる、という事を認識してください。
建築主の最大利益を優先するのであれば、設計と工事を分離して、設計事務所を直接設計監理契約を結ぶ事をお勧めします
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