ホーム > 地震に強い家造り > 耐震・制震・免震 自分の家にはどれが一番適しているのか?

● 免震住宅が求められる理由

● いま囁かれている耐震設計の問題点。

音叉を二台並べて、片方だけ叩くと、いつの間にか叩いていない方の音叉も鳴ります。
これを、共鳴と呼びます。
この現象は、両方の音叉の振動数が、同じだった場合に発生します。叩かれた方の音叉の震動が、音波となって空気中を伝わり、他方の音叉を震わせるのです。共鳴は二つの音叉の振動周波数が同じでないと発生しません。
しかし、音波の様な弱い力でも、音波の周波数と音叉の振動周波数が一致してしまえば、固い金属をも振るわせる事が出来るのです。
ここに、普通の地震では、「耐震」で抵抗出来ても、特別な地震には、「耐震」では抵抗出来ない、理由が隠されています。
何故、免震支承(装置)が考案されたのか、もう少し細かく説明します。

● 建物も地震波と共振します。

共鳴は周波数がごく短い場合に発生し、音として聞こえますが、周波数が長い場合は揺れとなって現れます。
これを共振と呼びます。
音叉に限らず、全ての固体は、固有の震動周期を持っています。もしも、地震の振動周期と、建物の振動周期が一致してしまうと、上の動画の様に大きく揺れてしまいます。
ちなみに、背の低いモノは周期が短く、背の高いモノは周期が長い傾向にあります。
また、鉄やコンクリートで出来たモノは周期が短く、木で出来たモノは周期が長い傾向にあります。
弦で云えば、強く張れば周期が短く、緩く張れば周期が長くなります。
これらを固体の固有振動周期と呼びます。

● 耐震の考え方は、踏ん張って耐える事です。

現行の建築基準法では、超高層ビルの様な特別な建物は別として、一般的な建物の構造には共振に対して、何も検討は行っていません。ひたすら建物を固く頑丈にする構造です。
つまり、これが耐震構造です。
上記の動画は、補強していない耐震等級1の建物が倒壊し、補強を行った耐震等級2の家が倒壊を免れた実験です。
共振する事が無ければ、補強した方が強いのは自明の理です。
現行の建築基準法では、この事を根拠に、法整備がなされています。

しかし、昨今の頻発する地震の結果、研究が大きく進み、現行の建築基準法のままでは、建物の倒壊を防ぐことが出来ないのでは、と囁かれています。
建築基準法は、建物を建てるに際して、最低限守らなければならない事をまとめた法律です。守っていれば大丈夫と云う法律ではありません。

● 同じ震度7でも住宅が壊れる震度7と壊れない震度7があります。

東日本大震災を機に、不思議な事象が囁かれています。阪神大震災は震度7でした。
東日本大震災も震度7でした。
しかし、阪神大震災では、構造を問わず多くの建物が倒壊したのに対し、東日本大震災では、地震で倒壊した建物は多くありませんでした。

ある政治家は、二十年間の間に、建物の耐震化が進んだ成果だと胸を張りました。しかし、その後に発生した熊本地震では、多くの建物が倒壊し、耐震等級2の家までもが倒壊しています。

上記の動画を見て分かる様に、同じ震度7でも、建物が倒壊してしまう震度7と、倒壊しない震度7があるのです。
東日本大震災の地震波は、素早く細かく揺れています。揺れる速度が速いのが特徴です。その為、2000galを超える信じられない様な、重力加速度を計測しています。(建築基準法で定める耐震構造の目標値は400galの重力加速度に耐える事とされています。)しかし、揺れる速度が速すぎたのが幸いして、共振しなかったため、建物の被害は阪神大震災と比べると、軽微なものに収まっています。
阪神大震災の揺れは、東日本大震災と比べ、緩やかですが、揺れ幅の大きく、共振してしまった建物が多かったのです。

つまり、阪神大震災や、熊本地震では、建物の固有振動周期と、地震の揺れの振動周期が一致してしまったのに対し、東日本大震災では、建物の固有振動周期と、地震の揺れの振動周期が一致しなかったのです。
この様な、建物を倒壊に至らしめる、共振を伴う振動周期を、キラーパルスと呼んでいます。

● 地震波と建物が共振してしまうと耐震等級2の家も倒壊します。

耐震構造は建物を固くして、踏ん張って耐える構造の事ですが、単に、固くするだけでは倒壊を防ぐ事は出来ません。
上記の動画はその良い例です。
左側の建物は補強を行っていない耐震等級1の建物で、右側の建物は補強した耐震等級2の建物です。
普通に考えると、耐震等級1の建物が倒壊して、耐震等級2の建物は、倒壊しないはずです。
この実験は、耐震構造の優秀性を示す為に、行われた実験です。しかし、 結果は補強して固くなったはずの、耐震等級2の建物が倒壊してしまったのです。

動画を詳細に見てみますと、最初の衝撃が加わった時点で、左側の建物は、壁が土台から浮き上がってしまってます。ロッキング現象と呼ばれる現象のお陰で、次の衝撃では地震の力が建物に伝わらなくなり、倒壊を免れています。主催者の公式見解は、壁が土台から浮き上がった時点で、左の建物(耐震等級1の建物)は倒壊状態にあり、立っていたのは偶然で、土台が浮き上がらなかった右の建物(耐震等級2の建物)の方が耐震性能的には優秀で、結果は予想通りだったとしています。

この事は、どれだけ固くしても、運悪く建物の固有振動周期と、地震の揺れる振動周期が一致して、共振してしまえば、大きく揺さぶられる事になり、更に運が悪ければ倒壊に至ってしまうと云う事です。
普通の地震ならば、耐震構造で建物を守る事が可能ですが、キラーパルスが発生してしまうと、現在の耐震構造では、不十分と云う事です。
耐震構造以上に、建物を地震から守る必要があるならば、地震波を建物に伝えない構造が必須なのです。

● 共振を防ぐ方法として制震が考えられます。

運悪く、共振してしまい、建物が大きく変形した際に、抵抗してくれるのが、制震ダンパーです。
耐震構造では耐えられない程、変形が進むと制震ダンパーが働いて、建物を倒壊から防ぐ装置です。

動画のメーカーの制震ダンパーはとても優秀で、制震ダンパーの設計マニュアルに、耐力壁として、壁量倍率が4.5~5.0の強度を大臣認定として取得しているとあります。
壁量倍率を横向きの荷重に換算しますと、この装置一基で、約860kg程度の力に抵抗出来る事になります。
また、ホールダウン金物等の引き抜き金物を検討する際は、壁量倍率を1.1~1.3上げる様にとの指示もあります。
と言う事は、耐力壁としては壁量倍率4.5~5の強度ですが、それを上回る力が働いて、建物が変形し始めても、制振ダンパーが機能して抵抗し続ける為に、壁量倍率を5.6~6.3程度に上げて、ホールダウン金物等の引き抜き金物を検討してくださいね。
と言う事です。
つまり、この制震ダンパーは、4.5~5.0の強度は、耐震壁としての強度で、制震ダンパーとしての実力は、引き抜き金物用に上乗せした1.1~1.3の壁量倍率分が、制震ダンパーとしての、性能だと云う事です。
つまり、横向きの押す力に換算しますと、約220~250kgと言う事になります。
という事は、建物が倒壊する程変形して、いよいよ耐えられなくなった時に、220~250kg分の抵抗をしてくれるに過ぎないのです。

こう断言してしまうと、メーカーの方は反論されると思います。しかし、私の考えが間違っていて、制震ダンパーは地震に対して、もっと抵抗して制震ダンパーそのものは、220~250kg以上の力にも抵抗したとしても、引き抜き金物がそれ以上の力に抵抗出来ませんので、結局は倒壊してしまいます。

建物の重量は30坪程度の総二階建てで、40ton程度あります。1G=980galの時で40tonですから、阪神大震災並みの880galの力が横向きに加われば、瞬間的にですが、36tonくらいの力で押された事になります。
220~250kg程度の抵抗力で、36tonの力に抵抗出来るのでしょうか。
確かに、制震ダンパーは、耐力壁として4.5~5.0と云う高い壁量倍率を得ています。
しかし、同等の性能は、筋交たすき掛け+面材耐力壁でも得られます。
価格にしてみれば、筋交たすき掛け+面材耐力壁であれば、5000円程度で出来てしまう性能です。

本当に、制震ダンパーを用いて、キラーパルスに抵抗しようとするならば、メーカーの推奨している様な一件の家に対し、2~4か所程度の設置ではなく、一階の全ての耐震壁にバランスよく、制震ダンパーを配置する事です。そうでなければ、共振してしまった建物の倒壊を、防ぐ事は出来ないでしょう。
一か所設置するのに、数万円しますので、全ヶ所設置となりますと、相当な出費となりますし、震度7の地震を震度7として、建物に伝えてしまう事に変わりありません。

制震装置は、お金を掛けた分程度には、効果があります(何もしないより遥かに良い)が、万全ではないというのが、私の制震ダンパーに対する考えです。

● 地震波との共振を完全に防ごうと思えば、免震住宅しかありません。

上記動画は、阪神大震災の地震波を用いて、検証実験した滑り免震支承(免震装置)の画像です。
免震支承が作用して、地震波を上部構造部に伝えていません。多少は動いていますが、実験結果から1/10に揺れを抑え込んでいます。
地震波を丈夫構造部に伝えませんので、共振する事はありません。
地震は、どの様な振動周期で襲って来るか分かっていません。阪神大震災の地震波に、抵抗しようと固く頑丈に造ってしまうと、今度は、東日本大震災の様な、周期の短い地震波と共振してしまうかも知れません。
つまりは、地震波を建物に伝えない、共振しない免震構造が最も安全なのです。

免震支承が、如何に優秀でも、多くの支持を得られないのには、理由があります。
それは価格です。滑り免震は安価とされますが、それでも300万円程度のコストアップが予想される為です。
地震で被害を受ければ、300万円程度の補修で済む保証はどこにもないのですが、新築工事の段階で、被災後の事を考えるユーザーは多くは無い為、世間一般に普及していないのです。

● 阪神大震災の地震波を用いた転がり免震住宅の震動実験

上記の画像は、阪神大震災の地震波を用いて、検証実験した転がり免震支承の画像です。
滑り免震よりも優秀で、1/16に地震波を抑え込んでいます。
しかし、木造住宅を建てる前に、鋼製の架台を設置する必要があり、免震支承と合わせると700万円程度の投資となってしまいます。

地震は、いつ襲って来るか予想が出来ません。明日来るかもしれないし、100年経っても来ないかも知れません。建物の寿命を考えると、現状での免震支承への高価な投資は、大きな賭けの様なものであり、クライアント全員にお勧め出来る装置ではないと私は考えています。
地震が発生しない限り、免震支承は「万里の長城」の様なもので何の役にも立ちません。

しかし、一たび地震が発生してしまうと、家族に寄り添えないお仕事をされている方(公務員・インフラ事業者・建設業者・交通運輸関係者・報道関係者・会社社長等々)は、何を差し置いても、新築の際には、検討項目に入れるべきではないでしょうか。

今後30年の間に、南海地震の発生確率は80%と云われています。今新築すれば、ほぼ間違いなく地震に遭遇するでしょう。発生した地震の地震波を予測する事も出来ません。
阪神大震災や熊本地震の様な建物に大きな被害が出た地震は直下型の地震で、被害の少なかった東日本大震災は海洋プレート移動型の地震でした。
だから、海洋プレート移動型の南海地震は建物の被害は少ない、と考える専門家もいるようです。
しかし相模トラフが移動した、海洋プレート移動型の関東大震災は、東京の家屋を破壊し尽しました。
地震波は、地震が発生してみないと、どの様な地震波となるかは判断できないのが、現状です。

震災後、家族に寄り添えない職業に従事されている方は、免震住宅を検討すべきです。
そうでない方も、制震ダンパーを用いるか、耐震等級の高い建物をご検討下さい。
決して、建築基準法通り(耐震等級1)で満足してはいけません。

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    土地探しからお付き合い願えないかとのお問合せメールを頂き、水害の危険の無い土地。地盤の良い土地を重点的に探しました。建築主様のお仕事柄、大地震が発生した時、家族に寄り添えない可能性がある為、免震住宅を選択されました。

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    基礎と土台が分離している免震住宅ながら、ホームエレベーターを設置して、尚且つ超高気密・高断熱住宅を目指した家です。免震住宅としての性能は滑り免震住宅としてはトップクラスの、阪神大震災の地震波を用いた実験では、震度7を、震度4程度にまで免震させています。