●素人でも判る構造のお話し

少し怖いお話しですが、現在建築されている、木造住宅は、殆どが構造計算をせずに建てられています。構造計算をしなくても、勘と経験で、木造住宅は建てる事が出来ると云う、専門家もいます。しかし、その奢りがある限り、地震のたびに木造住宅は倒壊してしまうでしょう。
そんな、恐ろしい家を、建ててしまわない為に、構造の基本を勉強してみましょう。

■ 建物は縦向きの力と横向きの力を分けて考える

建物には二つの力が加わります。縦向きの力と横向きの力です。
縦向きの力の原因は重力です。建物そのものの重さもありますし、荷物や人の重さもそこに加わります。 それを支えているのが、柱と云う縦材と梁と云う横材です。
家具や人は床の上に乗っていますが、床を支えているのが梁です。梁は柱に支えられ、柱から土台・基礎へと重さが伝わり、地面に力が流れて行きます。
横向きの力の原因は、地震や台風の力です。横向きの力は、縦向きの力の様に、常に建物に掛かる力ではありません。その為短期荷重と呼ばれたりもします。

横向きの力に対し建物を支えているのは、筋交いと呼ばれる斜め材や、面材と呼ばれる合板で構成される壁です。この壁が無ければ、木造の建物は、地震とか台風に耐えられません。

ポイント!=柱が多いからと云って、地震に強いとは限りません。梁が太いからと云って、地震に強くはなりません。
リビングを、
大きくする改造などで、壁を取り除いて、太い梁に入れ替えている例をよく見ますが、太い梁を入れたところで、地震には強くなりません。壁が無くなった分だけ、家は弱くなっています。

■ 耐力壁はバランス良く入れないと逆効果です。

右の画像は、平面図の壁の部分だけを、緑色で描いたものです。
上を北の方角としますと、 耐力壁は、平面的に見て、南北方向と東西方向に分けてバランス良く配置する事が肝心です。
南北方向の壁は、南北方向からの揺れに対して抵抗してくれます。東西方向の壁は東西方向からの揺れに対して抵抗してくれます。
斜め方向からの揺れは、その角度により南北東西両方の壁が抵抗してくれます。
ここで、仮に南面の耐力壁(東西方向の下側の壁)が無かったら、東西方向に揺れた場合、この家はどんな揺れ方をするでしょうか。
南側に何の耐力壁が無いと云う事は、車に例えると、片側のブレーキが前輪後輪とも壊れている状態です。ブレーキを踏むと片側だけしか効きません。車だとスピンしますが、これが家だと倒壊してしまいます。

■ 床は固い方が地震に強くなる。

地震波は、耐力壁と同じ方向から来るとは限りません。画像の様に、斜めから地震波が襲う事も、十分あり得ます。
では、斜めから来た地震力を、どうやって耐力壁に伝えるのでしょうか。
斜めから来る、地震力を耐力壁に伝えようと思えば、床面が頑丈でなければなりません。構造的に必要な床面の事を水平構面と呼びます。また、水平構面の固さを指す言葉として、水平剛性と云うものもあります。
床面が固ければ、斜め方向から地震力が働いても、菱形に変形する事無く、耐力壁に力を伝える事が出来ます。





水平構面が弱いと、斜めから来た地震力を、耐力壁に伝える前に 、平面的に菱形に変形してしまいます。
水平構面的に弱い部分は、二階の床の無い部分です。
階段部分に、床があると階段を、登って行くことができませんので、ここには水平構面がありません。
また、吹き抜けにも床を貼りませんので、水平構面を構築する事が出来ません。
大きな、吹抜けを作る時は、必ず構造計算を行って下さいとお願いしましょう。構造計算を行わず、勘や経験で吹き抜けを造ってしまうと、地震が来れば、画像の様に平面的に変形し、最終的には倒壊に至ります。
構造計算は設計事務所が行います。工事をする人が構造計算を行う訳ではありません。工事をする人が、経験からして大丈夫と云っても、工事をする人は、構造計算をした経験の無い人が殆どです。つまりは勘もいいところで、山勘で大丈夫と云っているのと同じです。

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