● 木造で耐火構造にした収益物件(老人ホーム)
昨年の木造耐火建築物の規制緩和により、今まで鉄筋コンクリート造や鉄骨造でした建設が不可能だった収益物件の多くが、木造でも可能になりました。
兵庫県は県条例で、要介護の方を収容する老人福祉施設は、二階建て以上の階に、入居者の為の部屋を設ける場合は、耐火建築物にする必要があります。
今までなら、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で計画されていましたが、昨今の建設費の高騰で、収益率がどんどんと悪くなっています。加えて、減価償却期間が40年程度と長く、老人人口の推移を予測すると、不利な状況に今後なって行く事は明白です。木造建築物であれば、工事費も安く、減価償却期間も短く、解体も容易な為、収益物件には最適な工法だと云えます。
● 杭工事が必要ない
木造建物の重量は、㎡当たり3tonに達しません。S造であれば、6ton程度、RC造であれば10ton程度になります。S造やRC造は、それだけ地盤に大きな影響を与えますので、余ほど地盤の条件が良い場所で無い限り、杭工事が必須になります。しかし木造では耐火構造にする為に、重い石膏ボードで耐火被覆しても、4tonに届きません。
● 深く掘る必要のない木造の基礎で十分
S造やRC造の基礎は、最低でも地盤面から1m以上の掘削が必要になります。木造基礎は、地盤面から30cm程度しか掘りません。
その為、S造・RC造に比べ、残土の搬出が少なくて済みます。
一般の木造基礎と同じように、基礎の立ち上がりを地中梁として利用できますので、わざわざ地中梁を別途設ける必要なありません。
● コンクリート量も少なくて済む
地中梁を別途設ける必要がありませんので、その分コンクリート量を抑える事が出来ます。
一般の木造住宅と比べ、収益建物の基礎は規模が大きくなるだけで、内容はなにも変わりません。
既知の技術で、誰にでも出来る工事ですので、競合建築会社が多く存在し、価格競争で値段を下げる事も可能です。
● 構造躯体も普通の木造
木造の構造躯体を組み上げる処までは全く普通の木造と変わりません。
規模が大きい分上棟作業に二日間を要しましたが、内容は在来の木造と何ら変わる事はありません。木造の住宅等に比べて間取り構成が単純な分、作業効率は上がります。
唯一老人施設の場合は、エレベーターを設置します。それも小型のエレベーターであれば、木造でも対応は出来るのですが、ストレッチャーを上げる事の出来るような、大型エレベータとなれば、エレベーターの動荷重を支える事の出来る様に、鉄骨の櫓をエレベータ周りに配置する事になります。
● 内装工事で在来木造との差が出ます
在来の木造建築物と、木造耐火建築物で差がでるのは内装工事からです。
在来の木造建築物は、準耐火建築物でも、15mmの石膏ボードを貼れば性能を満たしますが、木造耐火建築物では21mmの石膏ボードを二重に張らないと性能を満たしません。
準耐火建築物は、要求される時間内に、焼け落ちなければ良しとされますが、耐火建築物は要求される時間後も構造体の健全性が確保されていなければなりません。
その差が、内装の差になって現れます。
木造の構造体は、完全に石膏ボードで被覆されていなければなりません。しかし、どうしても被覆を貫通しなければならない設備配管も出て来ます。その様な場合はRC造の区画貫通と同様の処置を行います。こういった作業が在来の木造建築物と異なる作業です。
● 完成後は構造の別が分かりません