● 素人にでも判る地盤の話し

大阪と奈良盆地を宇宙から見た写真です。緑の部分は樹木が映えている場所。つまりは山です。平地の殆どは開発され尽くして、人の手が入っています。どの土地も同じ様に見えますが、大昔はそうではありませんでした。


現在の大阪平野と奈良盆地に、現在までに分かっている古代地図を載せてみました。大阪平野は上町台地を除く殆どが海であった事が伺えます。青い点線は縄文時代の海岸線を示し、赤い点線は古墳時代の海岸線を示しています。
上町台地の東側は、現代の浜名湖の様に汽水域が広がっていました。
奈良盆地の方は、縄文時代は、薄水色の部分まで湖でした。黄色い点は縄文遺跡ですが、盆地の中央に遺跡は存在しません。弥生時代になって濃い水色の部分まで湖は縮小します。白い点は弥生遺跡です。
つまり、大阪も奈良も、平地は殆ど水の中で、そこに泥が堆積していって、陸地化したのです。当然地盤は良くありません。そしてそれは、現在も悪いままなのです。


これは、科学的にも証明されています。下の地図は防災科学技術研究所が、提供しているJ-shis Mapと云う地図で、地盤の強弱を色分けで示しています。青い色の部分は、地盤が固く、赤い色になるにつれて、軟弱地盤になっていきます。
そこに先程の古代地図を当てはめてみました。かつて、海や湖であった場所とピタリと一致します。


こうしてみると、上町台地、北摂地域、南大阪。奈良市北部、枚方丘陵の付近が、固い地盤である事がわかります。


但し、地盤の強弱に関しては、その通りなのですが、今示した固い地盤付近には必ずと云って良いほど、活断層が走っているのです。


大阪近辺に安全な土地はない、と云う根拠はここにあります。実際に平成30年6月には、固い地盤である茨城・高槻を中心に震度6弱の地震が発生しています。

南海・東南海地震の様な海洋プレート移動型の地震は、100~150年周期と云う、比較的短い周期で発生します。それに比べ、活断層がズレる事により発生する直下型地震は、数千年と云う長い周期です。しかし、周期が長い分、数が多くあり、未知の活断層もまだまだ存在すると予想されています。
南海・東南海地震の様な、地震は周期性がはっきりしているので、ある程度予知も可能ですが、直下型地震は、いつ発生するのか分かりません。

その為、家を建てると、地震に遭遇するのは当たり前、と云う意識が大切なのです。 軟弱地盤の上に建つ家と、固い地盤の上に建つ家では対処の方法が異なります。
それらを踏まえて、建築計画していく事が重要なのです。

● 素人にでも判る地震の話し

● 地震学者じゃありませんが・・・
今から書く内容は、憶測を含んでいます。私は地震学者ではありません。建築家です。
地震学者が、建物に対する、地震の影響を研究してくれませんので、建築家が地震の勉強をしています。地震の専門家ではありませんので、間違った解釈や、過大に解釈している事もあると思います。
しかし、地震学者が躍起になっても、地震予知は出来ていませんので、建築家が地震の事を話ししても、荒唐無稽だと非難される根拠もないはずです。
南海地震の様な海洋プレート移動型の地震は、周期性がある事が分かり始めて来ましたが、活断層が動く直下型地震に至っては、全く予測不能と云うのが、現状です。
ですので、状況証拠を積み上げて、今後どの様な可能性があるのか、私見を述べます。


● 紀伊半島は東側から圧力を受けている。
上の画像は、大阪平野を中心に大阪近辺を宇宙から見たものです。
赤い線は断層帯で、白字で断層の名称と断層の性質を示しています。横ずれ断層とは、断層面を境に左右にズレる断層の事です。
逆断層とは断層に圧縮方向の力が加わり、断層を境に一方の地盤が一方に乗り上げる断層です。
ここには見えませんが、正断層とは、断層に引っ張りの力が加わり、断層の上を滑り落ちる様にズレる断層の事です。
大阪平野を中心に東は奈良盆地の東端から、西は淡路島まで、南北方向に五本の活断層が確認されています。この五本全てが逆断層で、東側の地盤が西側の地盤に乗り上げる様に、ズレています。つまり、赤い矢印の様に、紀伊半島全体が東側から押されているのです。

大阪に住んでいれば、生駒山は馴染みのある山です。大阪平野から奈良に抜けるのに、阪奈道路を使うと良く判るのですが、大阪平野から生駒山上までは、急勾配のヘアピンカーブの連続です。しかし山上を抜け奈良県側に入ると、ほぼ直線的に下って行きます。西斜面は急峻で、東斜面はなだらかなのです。上町台地にも同様の傾向が見られます。西側の急峻な崖を降りた処が活断層に当たります。
一様に、東から圧力を受ける原因は、太平洋プレート及び、フィリピン海プレートが、ユーラシアプレート(西日本が乗っているプレート)の下に潜り込む事によります。
潜り込んでいる間中、紀伊半島は東側から圧力を受け、逆断層のいずれかの場所で、圧力が解放されそれが直下型地震となるのです。最近では1995年の阪神淡路大震災を引き起こした、六甲淡路島断層帯が活動しています。また、2018年に発生した大阪北部地震の様に、どの活断層が動いたのか特定できないような地震も発生します。

● 地震の発生周期。
南海地震や東南海地震が発生して、紀伊半島への圧力が減れば、直下型の地震発生の確率が減るのかどうかは、今後の研究を待たねばなりませんが、理屈から考えれば、一時的には、直下型地震のリスクは減るのでしょう。但し、圧力が無くなったからと云って、ゴムではありませんので、縮んだ地盤が100%元に戻るのでもありません。歪みは歪みとして、蓄積されつづけます。
プレート移動型の地震の発生周期は、100~150年に一度と云われています。
それに引き換え、直下型地震は数千年に一度の確率で発生すると云われています。
と云う事はプレート移動型の地震が、50~60回発生すると、直下型地震が発生するだけの歪みが溜まると云う事になります。
確率の話しになりますが、六甲淡路島断層は、1995年に阪神淡路大震災で、動いていますので、今後数千年は動く心配はないかと思います。
同じ様に、活断層が前に動いたのがいつなのかを、調べて行きますと、西暦 1596年に慶長伏見地震で有馬高槻断層が動いています。次いで西暦1409年に大阪湾断層が動いています。その次に西暦734年に畿内七道地震で生駒断層が動いています。その前は西暦300年前後に中央構造線が動いています。
ここまでは、地震が発生してから2000年は経過しておらず、確率論の話しから云えば、まだ活動するまでに、余裕がある断層であると云えます。
しかし大阪周辺でまだ、出てきていない断層が二つあります。奈良東縁断層と上町断層です。
奈良東縁断層は、6000年以上活動していません。上町断層に至っては、18500年以上活動していません。地下には相当な地震エネルギーが溜まっているはずです。
地震が発生する度に、地震学者が「いつ発生してもおかしくないと思っていた」と発言しますが、上町断層と奈良東縁断層だけは、明日、地震が発生しても全く、不思議ではありません。

● 地震がいつ発生しても対応できる備えを
淡路島の北淡町にある野島断層保存館には、阪神大震災の揺れをシュミレーターによって体験する事が出来ます。出来ればそのシュミレーターで震度7を経験して頂いてから、家造りを考えてもらいたいものです。人が立っていられないのは当然ですが、構造計算を行わないで、建てた木造住宅では、とても耐えられない事を実感して頂けるかと思います。
地震で起こる建物への影響は、全て構造計算で解析できています。勘や経験で建てられるものではないのです。
家を建てると、地震に遭遇するのは当たり前、と云う意識が大切なのです。
「構造は判らないので専門家にお任せします」とは言わずに、「耐震等級3でお願いします」とはっきり要求しましょう。それが、貴方自身で貴方を守る最善の手段です。