●枚方・北海道でも大丈夫な高断熱の家
メールでのご相談がご縁で、設計させて頂いたお客様の住宅です。
高気密高断熱に関心を持たれ、このまま北海道にもって行っても大丈夫な家がお望みでした。
大阪でなぜそこまで高断熱にこだわるのかお伺いしたところ、お施主様は一年前まで北海道に住んでおられ、枚方に帰省するたびに風邪を引かれたそうです。
なぜかと云いますと、北海道の家は寒さ対策は万全で真冬でも、半袖で生活されるのが普通なんだそうです。
その感覚で帰省して薄着で家の中にいると寒くて風邪を引いてしまうのだそうです。
私は北海道の冬を体験した事がありませんので、当初は北海道で定められている基準だけが頼りの設計でした。
しかし関西での住まいに熟知している私としては、そのまま北海道の基準で建てる事にどうも抵抗を覚えます。
寒さ対策はお施主様の云う通りだとして、北海道にない夏の暑さ対策をなんとかしないと、夏場に熱気のこもった温室の様な家になりはしないかと言う不安です。
そこで家造りを根本的に見直す事から始めました。
一般的な住宅の床下は屋外空間と同じ環境で、フロアの裏側に発泡系の断熱材を施して部屋の断熱を図ります。
ただしこれには欠点がありまして、フロアと断熱材がピタリと張り合わさっていれば良いのですが、断熱材とフロアを接着剤で張り合わせる事はしません。
桟に断熱材を乗せてその上にフロアー材を止めるだけです。
施工不良や経年変化で断熱材とフロア材の間に隙間が出来てしまう可能性があるのです。
隙間が出来てしまえば隙間に冷気が入って底冷えの原因となります。
真冬の朝の起き抜けの台所に素足で立てなくなってしまうのです。
北海道並みの環境とのご要望に、これではお応え出来ないと考え床下を室内と同じ空気環境にする事を思いつきました。
床下には断熱材を張らずに、その代わり外部に面する基礎に断熱材を張り付けて床下を室内と同じ空気環境にします。そうすれば、真冬の朝
の起き抜けに台所に素足で立っても冷たくありません。
しかし、まだ足りない・・・・・
床下はコンクリートで出来ているのだから、この熱容量の大きさを利用しない手はない・・・そうだ地熱を利用しよう。
地中の温度は年間を通じて一定で凡そ16℃です。
16℃と云えば真夏では涼しいですが真冬だと逆に暖かく感じる温度です。なにもしないでも床下のコンクリートは16℃の地中の熱を放熱しているのです。これは面白い・・・
もっと欲が出てきて、暖房器具を用いずに16℃以上にする方法はないモノか考えました。
暖かい空気は高いところに上ります。逆に冷たい空気は低いところに下りて行きます。冷たい空気でも16℃な訳ですから真冬としては暖かです。しかし上に上っている空気はもっと暖かです。
屋根裏から床下までダクトを通してダクトファンで循環させてやれば暖気を床下に送れるのではないか。
また、夏場はその逆をすれば涼しい空気を屋根裏に上げる事ができるのではないか。
そう考えて、ダクトをネットで検索すると正転・逆転可能なダクトファンが見つかりました。しかも消音設計です。
これを床下に設置してダクトを小屋裏まで上げました。お陰でこの家は一階と二階の温度差が殆どありません。
その効果を最大限発揮する為、室内は殆ど間仕切らず、一階と二階を6帖大の吹き抜けでつないでいます。
また関西特有の夏の暑さ対策も挑戦しました。
関西の家が受ける日射量はものすごく、特に屋根面は全壁面の3倍の熱量を受けます。
表面積で言えば壁面は屋根面の三倍程度あるのに受ける熱量は1/3しかありません。
つまり関西の夏の暑さ対策は屋根面の断熱対策なのです。
冬場の室内の熱が外部に逃げるのは屋根も壁も同じ割合ですが、夏場の侵入する熱は屋根面からが圧倒的に多いのです。
その為屋根面に対してはより確実に断熱する為天井裏で断熱する事をせず、屋根材の直下全面に30mmのフェノール系発泡断熱材を二重張りしました。
加えて折板屋根の山の部分を利用して屋根通気が行える構造としました。
限りある予算の中で、知恵と経験を最大限活かしてお施主様よりなんとかお褒めの言葉を頂けました。大変満足されて住んでおられるご様子です。
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