●省エネ性能を検証する断熱検査
この家は、ZEH申請を行っています。ZEHとは、上記画像が示す様に、創り出すエネルギーと、一般的な住宅より省エネ技術で抑える事の出来たエネルギーの総和が、一般的な同規模の住宅が消費するエネルギー量を上回る住宅を云います。
エネルギー問題は、地球の温暖化に影響する社会的な問題です。今後造る家にエネルギーの垂れ流しは許されません。2020年の、省エネ基準の義務化の話しは、将棋税10%をどうしても導入したい、与党の思惑で流れてしまいそうですが、だからと云って、後世の人を苦しめる事になるエネルギーの垂れ流しは、慎まねばなりません。
また、ZEH申請を行えば、助成金は出ますが、助成金で太陽光発電の全費用が賄える訳でもありません。ですので、太陽光発電に全てを頼るのではなく、工夫で効率的に省エネを行う努力が必要になります。
●地熱を取り込む基礎断熱
この家は一般的な床断熱を用いず、基礎断熱を用いています。省エネ計算が複雑になり、施工も慣れていないと、割高となります。しかし、基礎断熱は、基礎のコンクリートに地熱を蓄積する事が出来ます。
地中温度は、年間を通じ16℃と一定です。夏の砂浜で、表面は焼ける様に熱い砂も、10cmも掘ると以外と冷たいのを体験された方も多いと思います。その熱を基礎のコンクリートに蓄積し、室内空調に利用するものです。夏の16℃は涼しいですし、冬の16℃は暖かいのです。基礎断熱にすると、床下は一階の室温と同じになりますので、床暖房が不要となり、余計なエネルギーの垂れ流しを防げます。
●空間を広く利用できる屋根断熱
屋根の断熱も、屋根面で行う屋根断熱と、天井で行う天井断熱の二種類あります。
小屋裏を屋外と同じ環境にするのか、小屋裏を屋内と同じ環境にするのかで断熱方法が別れます。
この家は、小屋裏を屋内と同じ環境になる屋根断熱を
ネオマフォームの40mmを二枚張りで構成しています。
断熱性能を表す単位で、Q値とUA値があります。
Q値は屋根や壁と云った断熱の境界面から移動する熱を容積で割ったモノです。小屋裏も容積に取り込める為、分母が大きくなり、性能の良い値が出るのです。UA値は容積でなく外皮面積で割る為、大きな違いは出ません。
実質的には、勾配天井を造ったり、将来、小屋裏収納庫を造る際にも、熱的境界面の検討を行わず、小屋裏収納庫を設ける事が出来ますので有利です。
●壁は屋根程断熱に気を使わなくても良い
壁は安価なグラスウール16kの100mmを使用しています。壁の断熱材はグラスウールよりも、もっと性能の良い製品が出回っています。予算に余裕のある方は、もっと性能の良い断熱材を使用されると良いですが、壁に関しては、16kで100mmほどの厚さがあれば、グラスウールでも、十分効果を発揮します。
グラスウールはコストパフォーマンスの良い断熱材なのです。グラスウールでコスト削減し、浮いたお金で屋根や、サッシュの断熱強化を図る方が、省エネ性能は向上します。
関西の家は、冬の寒さよりも、夏の暑さ対策に重点を置いた方が快適になります。関西の場合、屋根面が受ける日射量は、全壁面の受ける日射量の3倍に上ります。
夏快適に過ごそうと思えば、屋根の断熱に力を注ぐ事です。
●断熱検査風景
ZEH申請では、UA値で0.6以下を要求されますが、この仕様で0.6を下回る事が出来ます。
数値で現れる、数少ない住宅の性能の一つですので、このためだけの第三者機関による検査も受けます。誤った解釈や、独りよがりの断熱法を是正する意味でも、第三者の評価は重要です。
床下から小屋裏に至るまで、また、気密テープの張り方や通気胴縁の施工方法に至るまで、約一時間にわたって検査が行われ、無事合格しました。